映画『パターソン』のこと(その1)――ずっと聞いていたい人の話

 

twitter.com

 

私(1978生まれ)が中高生の頃というと音楽や映画の趣味に対して背伸びするところがあって(誰もが、とは言わないけれど)、その勘所がわからなかったであろうジム・ジャームッシュ監督の映画はその頃から好きだと思っていた。たぶん初めて観たのは『ナイト・オン・ザ・プラネット』じゃないだろうか。

 

最近ようやく自分でも「映画好き」といってもいいくらい、日常的に映画を観るようになって、今回観た『パターソン』はやっぱり面白かった。15、6歳の頃観た『ナイト・オン・ザ・プラネット』も、20歳の頃観た『ストレンジャー・ザン・パラダイス』や『ミステリー・トレイン』も、当時から(実は)背伸びしていることを自分でも気づきながら観ていたのだと思うのだけれど、それでもやっぱり自分にはフィットしている映画だったのだ、と今回、改めて思った。

 

『パターソン』でまず、印象に残るのはアダム・ドライバー扮するパターソンに住むバスのドライバー、パターソン(本当にこれ、冗談みたいだ)のバスに乗り合わせた乗客たちの、(何ということはない)会話。ジャームッシュの映画のなかで私がいちばん好きなシークエンスは、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に出てくる“靴ひもの笑い話”のシークエンスで、本筋(といったって、そんなものは初めからないみたいなのだけど)とは一見関係のない乗客たちの会話を聞いていると、それを思い出してにやにやしてしまった。

 

しかし『パターソン』の人物たち、そして彼らの会話には、ひょっとするともっと密度があるのかもしれないとも思う。『ザンパラ』のジョン・ルーリーたちの会話は見るからに弛緩しているけれど、『パターソン』にはもっと緊張感があるような気もする。私が音楽、音響の雰囲気に引っ張られているのかな?

 

とにかく『パターソン』は大好きだ。もっとこの映画について考えたくなる、そんな映画。自分でも何度か観てから、識者たちの評論、クリティークにも当たってみたいな、と思うけれど、今は、自分なりに色々と考えてみるのが愉しい。

 

ちなみに『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の“靴ひもの笑い話”はこんな感じ。私自身が以前書いていた「はてなダイアリー」より転載。たしかDVDの字幕から採録したんだと思う。 

 

ウィリーがいとこのエヴァに
ウィリー:
「ジョークを聞かせよう。三人の男が道を歩いていた。
一人が“靴ひもがほどけてる”
言われた奴が“分かってるよ”
違った、二人の男が道を歩いていた。
一人が“靴ひもがほどけてる”
言われた奴が“分かってるよ”
そこへ三人目の男がやってきて
“靴ひもが…”、“靴ひもが……”
その先は忘れた。
(一人で含み笑いを浮かべて)面白い話だ」
エヴァ:
「(笑いながら)でしょうね」 

 2008-11-12 - 日記オヤマァ

 

パターソン [DVD]

パターソン [DVD]

 
ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]

ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]