意味をなすことに意味がないことも、わたしにはよくわかっている。そのことに気がつかない人がなんて多いことか!
ラーメンはおいしかったが、この八割くらいの量でいいのになあといういつもの感想が変わることはなかった。
柴崎友香『パノララ』より
二冊の本をいっぺんに読み終わった、といっても二冊同時に開いてまったく同時に読み進めているはずもなく、数日間平行して読んで、同じ日に読み終えた、というわけで、珍しいことでもないことだけれど。――ただ、ひさしぶりにそうしてみると、読了後の気持ちの混ざりぐあい、二人の書き手とそこに描かれたたくさんの人物、事物の連なりにわたしのこころはたしかに引っかかりやモヤモヤ、かき混ぜられた感覚があって、こうしてことばにしてみるとネガティヴに聞こえるフレーズばかりが浮かぶのが不思議だが、その感じは実は、かえって心地がよい。
二冊の本は読み終えた順に、
マーク・オブマシック『ザ・ビッグイヤー/世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲(ラプソディー)』(朝倉和子訳、アスペクト刊、2004年)
柴崎友香『パノララ』(講談社文庫、2018年)※単行本は2015年
――この二冊については近いうちに感想を書いてみたいが、うまく書けない、書きようがない気もする、それぞれ、それくらい面白い本だった。具体的に触れないことには、こういうブログ、テキストがわたし以外の第三者にとって意味をなさないだろうことはぼんくらなわたしにも容易に理解できるが、意味をなすことに意味がないことも、わたしにはよくわかっている。そのことに気がつかない人がなんて多いことか!
探鳥家でない人の質問はいつも同じだ。誰かが本当に鳥を見たって、どうしてわかるんです? なぜそれを信じられるんです? 本当にすべて信頼のもとに受け入れるんですか? コミトの答えはいつも同じだった。探鳥界で評価を得るには、自分でそれを獲得するしかない。
マーク・オブマシック『ザ・ビッグイヤー/世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲(ラプソディー)』(朝倉和子訳)より